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2013年 06月 09日

作家のなだいなだ氏の死去を知って

先ほど、産経ニュース他で、作家のなだいなだ氏が亡くなったことを知った。
(http://sankei.jp.msn.com/life/news/130609/bks13060913050013-n1.htm)

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(以下、産経ニュースより、抜粋)

ユーモアあふれる文章で知られる作家で精神科医のなだいなだ(本名・堀内秀=ほりうち・しげる)氏が死去していたことが9日、分かった。
83歳だった。

 昭和4年、東京生まれ。慶応大学医学部を卒業し、フランスに留学。
帰国後、慶応大病院、井の頭病院などを経て国立療養所久里浜病院に勤務する。
医師としてアルコール依存症の治療に取り組むかたわら、スペイン語で「何もなくて何もない」を意味する「なだいなだ」をペンネームに、幅広い執筆活動を展開。
「パパのおくりもの」などのユーモラスな語り口のエッセー、「海」や「神話」などで計6回芥川賞候補入りした小説などで知られた。

 平成15年にはインターネット上に、老人の暮らしやすい社会作りを目指す仮想政党老人党」の旗揚げを宣言して話題を集めた。
また、ラジオの「全国子ども電話相談室」にも出演して人気を博した。

 著書に「人間、この非人間的なもの」「TN君の伝記」「老人党宣言」など多数。
「娘の学校」で婦人公論読者賞、「お医者さん」で毎日出版文化賞受賞。

 近年、がんで闘病中であることをブログなどで明らかにしていた。

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私にとっては、夏目漱石、太宰治に並んで、人生で 人間として 生きる上で、最も影響を受けた作家だった。

氏の最高傑作の本は、「権威と権力」<~いうことをきかせる原理・きく原理>(岩波新書、1974年初版)だと思うし、今の時代に於いても通用する名著と思っている。

大学時代に読んで、「よくこんな本を世の中に出したな~!?」と驚き、大学の図書館で借りた本に線等を書き込んだので、本屋で買い、それを図書館に返そうと思ったが、
本屋で見つからず、「やはり、発禁されたのか?」と思ったほど、衝撃を与えた本だった。
(本は、その後、数ヶ月後、買えたが・・・。)

私の生き方において、氏の「権威と権力」はバックボーンに今もなっている。

クヮルテット」<~第1楽章性転換手術 >(文藝春秋、1970年初版 、のち集英社文庫、ちくま文庫)は、性転換及び性同一性障害 を真摯に扱った、やはり 名著で、この本も、世の中へ問い質した内容の本だった。
1970年代は、まだ性に関しては、日本は遅れており、医学界も保守的だった。
そこに切り込む氏は、やはり強靱な勇気があったと思う。

信じることと、疑うこと 」(径書房、1985年初版(こみち双書) のち、ちくま文庫)及び、
民族という名の宗教」<~人をまとめる原理・排除する原理>(岩波新書、1992年初版)も、
世界の矛盾をユーモアも交えながら、且つ、真摯に指摘した<世界的な名著>と思っている。

氏の指摘したことが、世界の各民族及び宗教界に広まっていたなら、テロなどはかなり防げたように思う。

神、この人間的なもの」<~宗教をめぐる精神科医の対話>(岩波新書、2002年初版)は、前の本3部作後、世界が混乱している現状を観ながら、ある種諦観で記されていたが、
それでも人類を信じる気持ちは捨てて無かった。

初期の作品の「れとると」(大光社、1967年初版、のち 角川文庫)も、心を病む人間を真摯に扱い、且つ、人(:患者)を傷つけることなく、細やかに扱かった作品だった。

現代において、かなり問題化されている「精神を病む」人間を真剣に捉えている やはり傑作と思っている。

第57回芥川賞候補作だったのは、当然だったと思う・・・。

何とか賞には、一切関係しない氏の生き方は、芥川や太宰のように ある種「賞」に振り回された人生を送ることも無かった 作家としても、人間としても、立派な生き方だった、と思う。

人間としては、夏目漱石より上だった、ように思われる・・・。


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後、2003年に「老人党宣言」(筑摩書房)を世の中に出し、高齢化社会の矛盾を世の中に問い、インターネット上のヴァーチャル政党老人党」を立ち上げ、活動をおこなった。
(参照:http://6410.saloon.jp/)

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氏の私的なブログ<なだいなだのサロン>(http://www5.ocn.ne.jp/~nadashig/)は時々読んでいて、今は、フランスに居て から日本に戻り、関東に住んでいて、 体調が悪いことは知っていた。

氏の「打てば響く」(http://www5.ocn.ne.jp/~nadashig/page008.html)の5月28日付けの言葉がおそらく最後の文章だと思うが、
(この文は読み損ねていた。
<130610追記:> 今年1月からの「なだいなだのサロン」も読んでいなかったので、先ほど、読み終えたが、
かなり、日本の現状を心配していたことが分かる。

<130610追記:今、氏の5月28日付けの言葉を読み終わりましたが、やはり、氏らしく、希望を捨てないで、且つ、真摯に世の中及び自身を捉えていた ことが分かりました。
死の直前まで、理性的であり得る人間の生き方は、人間の死に方としては、最高の死に方<:生き様>と思います。
この点においても、芥川、太宰、夏目より、格段上の生き方だった ように思います。>

ここに全文を掲載しておきます。(原文のまま・・・)

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 最近の株の暴落。アベノミックスとやらの円安政策に騙されるものも、はじめ
は多いだろう。しかし、こんな人工的な手段(坊ちゃんたちの考え付きそうな)で
は、デフレ脱却とやらはできない、とぼくは睨んでいました。『婦人之友』にその
ことを書いておきました。

 株屋たちが、それをはやして株価を吊り上げていましたが、もうけを得るの
は、この辺が限度と考えたのでしょう。それが今度の暴落になったとぼくは見ま
す。

 日本の株でもうけているのは日本の株屋ばかりではありません。儲けを狙う
世界中の株の相場師・投機家なども、こういう機会を逃さない。かれらは、ナシ
ョナリズムには関係ありませんから、もうけられるのは、これが限度かなあと思
えばさっさと手を引く。

 そして数か月の浮いた気分も、もう終わりでしょう。日本のマスコミは昔から、
どちらかというと政府寄りで、アベノミックスの提灯を持ってきましたが、いまご
ろ、この騒ぎで一番儲けたのが相場師や投機家で、損をしたのが、これから円
安の付けを、諸物価値上げの形で、払わせられる日本の庶民だと気が付いて
いるでしょうか。

 でも、株暴落が、参議院選挙の前であったことが、唯一の救いです。



 一方で、アメリカに勇ましくケンカを売った維新の会の橋下が、あっけなく降参
してしまったのは意外でした。次号のちくまに、少しは頑張るだろうと、見込みを
書いてやったのに。ちょっとがっかりでした。維新の会の議員たちが、選挙のた
めに、謝らせたのでしょう。しかし、タイミングが良くない(かれらにとってです)。
維新の会の勢いはもうこれで終わりでしょう。つまりかれらも終わり。

 現在まで、ひたすら選挙の利害で結びついていた自民・公明の連合ですが、
改憲に消極的な公明とは選挙が終わるまで付き合い、あとは維新の会とくっつ
こうか、とひそかに考えていた自民党の黒幕も、この維新の会の自滅は計算
外だったのではないかなあ。

 こうして自民の勢いが落ちてきたのに、それに付け込むことのできる野党が
いない。野党連合を作る知恵者がいない。つまりは、少しばかり知恵の深い政
治家が野党にいないということ。本当に政治家日照りですな。



 ぼくは、がんとの付き合いで、なんとか頑張っていますが、白状すると、ちょっ
ときつい。

 がんの告知は、本人に、自分の残りの人生を計画させるためには都合がい
い。ぼくはその恩恵を受けている。しかし、父、夫が次第に死に近づくということ
を知らされた近親の者たちには、この告知は、かなりな苦痛を与えている。そ
のことなど知ったこっちゃない、自分のことで頭はいっぱいだ、といっていられ
ないのが、精神科医である本人。精神科医の同僚たちよ、告知のこうした一面
の研究をしてくれないだろうか。それがぼくの今の気持ちだ。

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心からお悔やみ申し上げます。

(130610追記:)
そして、氏の志(こころざし)及び人間愛を実体として、人間社会で実現するする人間が、今後も現れることを 切に願います。

私は、私なりに 氏の明晰な志を実現しようと思っています。


by mohariza12 | 2013-06-09 23:45 | 書籍


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